近年、歯科医院を取り巻く環境は大きく変化しています。少子高齢化による保険診療の需要構造の変化や、治療費の抑制圧力、さらには医院同士の激しい競争が続くなか、医院経営の安定を図るためには自費診療の比率を高めていくことが一つの戦略になってきました。加えて、患者ニーズも「虫歯や歯周病の治療」を超えて、インプラントや矯正・審美治療など、美しさや機能性を重視する方向へとシフトしています。こうした背景から、多くの歯科医院が「どうすれば自費診療を増やせるか」を模索しているのが現状です。
そこで今回は、実際に自費率を高く保ち、患者さんからも高い支持を得ている「ラ・エビスクリニークデンタル」の院長先生に、その取り組みや成功の秘訣を伺いました。患者さんと医院双方が納得できる形で自費診療を行うためにはどのような考え方や工夫が必要なのか。開業当初から自費診療に強みを持ち、数々の実績を上げてきた現場の声を、ぜひ参考にしていただければと思います。

医院名:ラ・エビス クリニーク デンタル
電話番号:03-6451-2314
住所:〒153-0062 東京都目黒区三田1丁目11−29 T2000ビル 2F
自費率が高い歯科医院へのインタビュー
【インタビュアー】
本日は、自費率の高い歯科医院を経営されている院長先生にお話を伺います。どうぞよろしくお願いいたします。
【院長】
よろしくお願いします。
開業当初から「自費診療メイン」で差別化
インタビュアー:
まず、先生のクリニックは開業当初から自費率が高いと伺っています。どのような思いでスタートされたのでしょうか?
院長:
もともと周辺には歯科医院が多く、駅からも離れていて差別化が必要だと感じていました。
「痛い・腫れた・取れた・抜けた」などの一般的な治療は近隣の歯科医院さんでも受けられますよね。であれば、当院は より専門性の高い審美治療や、きれいに見せたい、笑顔を良くしたいといった“口元全体の美”に重点を置こう と考えていました。これは開業当初からの方針でした。
開業当初の集患・周知方法
インタビュアー:
自費診療を軸にすると決めても、まずは知ってもらう必要がありますよね。どのように患者さんに周知していったのでしょうか?
院長:
当時は今ほどWEB広告が盛んではなく、僕がお願いしていたWEB担当の方針もあって、 リスティング広告などの課金による集客はほとんどしませんでした。代わりに、 ブログの更新や雑誌への掲載、テレビの取材 など、オーガニックな形でブランディングする方法を重視していました。
ちょうど開業したときに「オーラルダイエット」でテレビや雑誌に露出できる機会があり、 それが大きなスタートダッシュ になったと思います。ただ、テレビは一過性のものなので、結局は 継続的に情報を発信し続ける ことが重要ですね。
患者ニーズに合わせたメニュー設計
インタビュアー:
現在では自費診療のメニューとして、インプラントや矯正、審美治療など幅広く展開されているそうですが、特に意識していることはありますか?
院長:
どの治療も必ず患者さん自身のニーズに寄り添うことを心がけています。例えば、
- インプラント:本来は高齢者や歯を失ってしまった方などニーズがある層が明確。だけど、そのエリアの住民の背景を理解せず、「とにかくインプラント」と押し付けるのは良くない。
- 入れ歯:保険と自費の違いはもちろんあるけれど、構造上はどちらも粘膜に負担がかかる。初めて入れ歯を作る方には、まず保険の入れ歯を試してもらい、そこから自費へ移行するかどうかを検討してもらう。あるいは、いずれインプラントに切り替えるべきかもしれない。
こちらが主導するのではなく、患者さんが求める選択肢を見極めることが大切ですね。
コロナ禍で矯正需要が高まった理由
インタビュアー:
コロナ禍の時期には、矯正治療に力を入れられたと伺いました。そのあたりはどんな背景があったのでしょう?
院長:
コロナ禍で一時的に患者さんが来院を控えるなか、 マスク生活で口元が隠れるメリットを見出し、 矯正治療が伸びる という流れになりました。マウスピース型矯正(インビザラインなど)は見た目に配慮できるので、日本人の「矯正は目立つから嫌」といった心理的ハードルにも合っていたのだと思います。
ただ、 データありきのマウスピース矯正だけに頼るのではなく、当院では インハウスアライナー を導入し、患者さんごとに状態を見ながらステップを刻む方式を取り入れました。そのほうが 誤差に柔軟に対応しやすい んですよ。
患者主体のカウンセリングを徹底する
インタビュアー:
自費診療を提案する際、どのように説明しているのでしょうか?
院長:
一番大切なのはこちらが押し付けないことです。医療者側の技術や信念を“患者は素人だから”という形で押し付けるのは良くない。
「インプラントが嫌だ」と思っている方に無理やり勧めても、不信感を生むだけです。本人が望んでいない治療を押し通せば、後々トラブルにつながります。
あくまでも患者さんの希望や不安をくみ取り、選択肢を示し、その中から患者さん自身が納得して決められるように導く——これが大切だと考えています。
自費率を高めるために必要なポイント
インタビュアー:
最後に、自費診療を増やしていきたい歯科医院に向けて、どのようなアドバイスがありますか?
院長:
- 差別化の明確化
まずは「他院にない特色」を持つこと。一般治療はどこでも受けられるので、自院でしかできない専門性や付加価値を打ち出す。 - 立地とニーズのすり合わせ
自費の内容によってターゲットは異なる。インプラントなら高齢者が多い地域、矯正なら若い層やオフィス街に近いなど、 自分の強みと地域ニーズの合致が理想。 - 患者さん主体の説明
自費診療は高額になりやすいからこそ、 押し売りではなく患者さんに選択させる。自費が本当に患者さんに必要かどうか、正しく伝える姿勢が信頼につながる。 - 継続的な情報発信
テレビやSNSなどのメディア露出は一過性になりがち。 どんな形でも継続して医院の強みを発信し続けることが重要。
こうした点を意識していけば、自ずと患者さんから求められる「自費診療」の割合は高まっていくのではないかと思います。
まとめ
周囲に多くの歯科医院がある状況のなかで、自費率を高め、安定的に経営を続けるには「他院との差別化」や「患者ニーズを読み取る視点」が不可欠です。院長先生がおっしゃるように、“自費診療を押し売りするのではなく、患者さんの要望に応じた専門性や付加価値を提供する”ことが重要なポイントといえます。さらに、コロナ禍の矯正需要のように、社会の変化を的確に捉えながら柔軟に対応する姿勢も見逃せません。
「自分のスキルをどう活かし、患者さんが本当に必要とする治療をどのように提供していくか」——この視点を大切にし続けることが、自費率向上と医院の信頼を両立する秘訣と言えるでしょう。
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